自作キーボード Willow 64を作った話
Willow64とは
Willow 64は、私(このブログの著者)が設計、制作した自作キーボード です。
この記事は、そのキーボードの特徴や工夫した点に関する話です。
エルゴノミクス?
このキーボードは、個人的にキーボードに欲しいと思った要素を詰め込んだもので、特に人間工学的な理論(研究論文)の後ろ盾はありません。従って厳密な意味でエルゴノミクスとは名乗ることはできないと思っています。 ですが、キーボードの特長を一言で表すのにとても便利なので、エルゴノミクスキーボードという言い方をさせてもらっているところもあります。
工1年以上の時間をかけてプロトタイプ制作と試用、改善のサイクルを重ねてこの形状となりました。 学的なペーパーにはまとまっていませんが、 個人的には 非常に快適なキーボードとなっています。 多くの方にもその快適さを感じていただけるのではないかと思っています。
コンセプト
このキーボードの設計の考え方とか工夫したところを少々。
独特なカーブを描いた物理キー配置 (Willow配列)
Willow64は、カーブを描いた独特なキー配置をしています。
キーボードで代表的な物理配列としては、一般的によく見る 横方向にずれたロースタッカード配列、 縦方向にずれたカラムスタッカード配列、 ズレを無くし格子状に配置するオーソリニア配列、ロースタッカード配列を途中で折り曲げたようなアリス配列など様々な配列が存在しおり、ユーザの嗜好によって選択、改良されています。
Willow 64は、そのどれとも異なる、あるいは全てを混ぜ合わせた様な独自考案の配列です。
横の配列(行)
手を自然においたときに、そのまま自然にキーに指先がフィットする カラムスタッカードがベースにあります。
更に加えて、奥側(R4,R3)は 指を伸ばす状態となるので 段差は緩やかに 手前側(R2,R1)は指を縮めた状態でも自然にキーに届くよう、上下の段差(スタッカード)が少し大きくなるよう、位置によって段差が変わる構造です。
縦の配列(列)
縦のキー配列は、内側から外側へ緩やかにカーブする配置にしています。
横の配列と同様に、指を伸ばした状態、縮めた状態で自然にキーに届くよう、手前側がより大きくカーブするような配置となっています。
キーの角度
指の動きに合わせ、指先の向きとキートップの向きがなるべく一致するように、キー自体も微妙に回転した配置になっています
上記のような軸を考慮した結果独特なカーブが生まれました。 キーボードの上で指を伸ばした状態から握るように指を縮めていったとき、指先が自然にキートップの上を滑っていくのがわかると思います。
不器用な親指向けのサムクラスタ
親指は意外と器用ではないという前提で設計しています。
個人的には、親指が常用できる範囲は2キー程度で、それ以上のキーを担当すると移動のコストからくる打鍵までの遅延と指の疲労が徐々に大きくなる感じ(個人の感想です)。
そんな想定をベースに、親指の最短の移動で2つのキーを素早く打てるよう独自の工夫を凝らした配置としました。
1.25Uを90度回転して、2つ対面で配置
親指は2つのキーの間の窪みで挟み込まれる形になるので、親指の明確なホームポジションとなりえます。
その親指ホームポジションから、左右にある主要な2つのキーへは最短の移動距離で到達でき、押し間違えることもありません。
親指への過度な負担を抑えることができるかと思います。
また周辺には範囲に更に左右各3つキーを配置し、合計5つと必要十分なキー数でクラスタを構成しています。このあたりは好みに応じて如何様にでもカスタマイズできると思います。
US ANSI配列準拠の64キー
独特な配置ながら、 US ANSI配列に準拠しています
左右にあるShiftやEnterといった機能キーも通常のサイズのキャップを想定した配置ですので、通常市販されているほとんどのUS配列キーキャップセットがそのまま使用できます(注1) 特殊なサイズのキーキャップは前提としていません。 お気に入りのキーキャップを楽しみましょう。
(注1: 現バージョンでは 2U BACKSPACEに対応していないので、少し注意が必要です)
使用方法は2 Way : 一体型でもセパレートでも
Willow64は利用者の好みに合わせて一体型もしくはセパレート型を選択できますし、気分で変えることもできます。
一体型
基本は一体型での運用を想定しています。
一体型で運用する場合であっても左右の手が担当するキーをあえて余裕を持って分離する構造とし、方から手のひらにかけて無理がかからないようにしています。
また、セパレート型に比較し一体型での運用は、右手/左手担当のキーの相対位置が固定になるので、上半身から腕を含めた打鍵のポジショニングが一貫し、ストレスのない運用が可能と考えています。
セパレート型
セパレートは日本の自作キーボード界隈で人気が高く、腕を大きく広げたリラックスポジションをとったり、ノートPCやマウスをを間に挟んだりと様々なメリットがあります。
ドライバでネジを締め直す必要がありますがどちらでもお好きな方で。
(現在頒布中のバージョンは、セパレートタイプのみのパーツが入っています。追加パーツで一体型にもできますので様子を見ながら出していきたいと思います)
エンクロージャー
PCBを上下からプレートで挟む いわゆるサンドイッチマウントタイプの構造で、キースイッチを支持するプレートは1.5mm厚のステンレス、 キーボード下面は3mm厚アクリル板を使用しています。
ステンレスとアクリルプレートがコスト面で不利ですがしっかりした剛性が保てています。
RGB LED (Option)
各キーの下部に マイコン内蔵型LEDを実装することができ、華やかな演出が可能です。
LEDチップの実装が大変という場合は、LEDテープを用いてアンダーグローを光らせることもできます。
光ればればそれはもうゲーミング!
QMKファームウェア対応
自作キーボードで広く利用されているQMKに対応。 キーマップの変更はもとより、様々な独自のカスタマイズを入れることができます。
また パソコン上でGUIを用いてキーマップを簡単に変更できるVAIにも対応なので プログラミングの知識が少ない方でも容易にキーマップのカスタマイズが可能です。
How to buy
同人ハードウェアとして BOOTHで頒布しています。
[自作キーボード HANACHI-Ya]
2020年12月現在BOOTHで頒布中のキットは、セパレートタイプです。
How to build
ビルドガイド github.com
フォトギャラリー
今後のエンハンス
- 2Wayは製造コスト高と、実際の運用が難しいので、分離
- コスト高なアクリルとステンレスで構成するプレートをPCBで代用するデザインに変更
- 左側にロータリエンコーダは欲しい
その他に新企画として、Willowシリーズの新規格キーボードを検討
- Willow配列のメインのところだけ切り出した40%前後のキー数
- 左右シンメトリカル
- 分離型
こちらはこれはまたゆっくりと